アナモルフィックレンズでは同じ焦点距離の場合ノーマルのレンズよりも広い水平画角となるため、パノラマ写真のような広い画角での撮影が可能になります。しかし一般的なパノラマ写真のように横長のフレームで撮影したり複数の画像を張り合わせるのとは違い、レンズ自体の構造により広い水平画角を得ています。 詳しくはこちら > wikipedia アナモルフィックレンズ

SIRUI製 アナモルフィックレンズ
アナモルフィックレンズは通常構成のレンズの前面に半柱状のレンズが配置され、通過する光を水平方向に圧縮します。私が使用している1.33倍のレンズの場合だと画面が水平方向に約75.2%圧縮された状態で記録されます。正面から見ると写真の様に後玉が楕円形に見えます。
当然ファインダー像も圧縮された状態で見えています。デスクイーズ機能のあるカメラであれば圧縮された画面を引き伸ばした正常な比率で確認できますが、私が撮影に使用しているE-M1Xにこの機能はありません。デスクイーズ機能付きの外部モニターを接続することも可能ですが機動性が大幅に下がってしまいます。結果、圧縮された状態で構図を決めることになりますので撮影には多少の慣れが必要になります。
レンズはマニュアルなのでピント、絞りとも手動です。画作りのためにISO感度もマニュアル設定で運用しています。電子接点も無いのでレンズ交換ごとにカメラ本体に記憶させてあるレンズ情報を切り替えて使用します。ここには各レンズの焦点距離も記録されているので、センサーシフト式の手ブレ補正が使用レンズに合わせて有効に動作するようになります。
アナモルフィックレンズで撮影した映像にはいくつかの特徴が現れます。レンズに入る像を光学的に圧縮することで発生する大きな収差。樽型歪みと倍率色収差は現在の最新レンズのレベルからするとかなり強めに発生します。ボケは縦方向に強く現れ、また点光源による丸ボケは円形でなく楕円形を成します。そして強い光源を直接撮影した場合に発生する横方向に伸びた青白いフレアも特徴的です。これらの特徴はシネルックとも呼ばれ、映画の映像的特徴と合致します。
シネマアスペクトにこだわらずに3:2や4:3でレンズの特徴を活かした撮影をするのも面白いと思います。自分も映画ではありえない縦構図の撮影をしています。
撮影した画像は水平方向に圧縮されているので、現像のあと最終的に正常な比率に戻す必要があります。以下その手順を追って説明します。(下記ビデオを参照)
撮影>
アスペクト16:9のRAWで撮影します。私が使用しているアナモルフィックレンズは16:9で撮影した映像を横方向に引き伸ばして元に戻す前提で設計されていますので、16:9であれば縦の構図はほぼそのままで確認しやすいのです。またRAWで撮影しているのでデータには上下に余白も記録されており、事後の微調整も可能です。
現像>
現像はLightroomを使用して通常のRAW現像と同様に処理します。またクロップ位置とクロップサイズの調整もこのとき行います。先程「横に伸ばして元に伸ばす前提」と書きましたが、横に引き伸ばす場合は最終データサイズが大きくなることと、引き伸ばしによる画質の劣化も想定されます。そこで横に1.33倍伸ばすのではなく、縦を75.2%縮小しています。これなら横方向の解像度は変わらず、画質の劣化も伸長するよりは少ないと思われます。
この場合16:9のまま処理すると最終的な画像の比率がシネマアスペクトより少し縦長になってしまうので最終サイズから計算で割り出した値であらかじめ約1%ほど縦方向をクロップしておきます。
この場合16:9のまま処理すると最終的な画像の比率がシネマアスペクトより少し縦長になってしまうので最終サイズから計算で割り出した値であらかじめ約1%ほど縦方向をクロップしておきます。
書き出し>
現像済みのRAWデーターをPhotoshopに渡します。細かなレタッチや複雑な修正が必要な場合はPhotoshopで行います。
リサイズ>
最終的なシネマアスペクトにするため「画像解像度」で縦方向に圧縮します。一連の作業はバッチとして登録してあります。必要に応じて各種リサイズやフォーマット変換を行います。
1.33倍のレンズを使用してE-M1Xの最大解像度で撮影した場合の各工程でのピクセルサイズは下記のようになります。
撮影データ 5184 x 2920 16 : 9
縦方向をクロップ 5184 x 2884
縦方向を圧縮 5184 x 2168 2.39 : 1
*この数値は最終ピクセルサイズを切りよく収めるために小数点を丸めているので誤差を含みます。